人口や国内総生産の上昇や拡大が進んでいる東南アジアは、国民の所得上昇により医療も先進国と同等の水準を求めようとするニーズの高まりがあります。高水準な医療ニーズが高まった理由としてはガンや心臓病、糖尿病や高血圧など生活習慣病の増加や医療機器の需要増加などがありますが、現在の東南アジア6ヵ国ではどのような医療サービスが受けられるようになったのでしょうか。ここでは、渡航前に知っておきたい東南アジアの医療サービスについて国ごとに紹介していきます。
フィリピンの医療サービスとは?
語学留学先として人気のあるフィリピンですが、医療サービスに関しては病院や地域によって差があります。このような差は、都市部と地方での経済格差によって生じているようですが、オープンシステム制度が利便性を高めています。
オープンシステム制度とは?
フィリピンの医療サービスでは、オープンシステム制度を設けています。日本では、基本的に医師が決まった病院に所属して治療を行っていますが、フィリピンでは医師自体が施設を選ぶことができるため、病院に所属せずにフリーランスとして働いているのが特徴です。そのため、同じ医師が複数の病院に所属し、病院施設や入院部屋を共有したり、曜日や時間で診察する場所を変えたりしています。
事前に保険に入っておくと安心
フィリピンでは、オープンシステム制度を設けているため、医療費の支払い方法が日本と異なります。日本では、治療を受けた医療機関ごとに支払いを行いますが、フィリピンでは、医師と各検査室によって会計が別であるだけでなく、前払いで医療費を払わなければなりません。検査の際も同様で、検査内容ごとに専用の会計を先払いで行うシステムです。そのため、入院になった場合は前払いで保証金として4~10万円程度必要となります。このような事態に備えるためには、事前に保険に加入しておくと保険省認定の医療施設で治療できるので安心です。
シンガポールの医療サービスとは?
シンガポールの医療機関には、全て公的な医療機関というものがありません。ここでは、シンガポールと日本の病院システムの違いを紹介します。
日本とは異なる病院システム
日本では、病院に医師が所属して治療や検査、入院などの医療行為が行われますが、シンガポールでは公的病院と私立病院の一部が日本と同様のシステムを取り入れているだけです。他の病院は、フィリピンと同じようなオープンシステム制度を取り入れているため、各検査や使用において支払いが別となります。
薬の用量には注意が必要
日本とシンガポールでは、薬の用量に注意しなければなりません。日本に比べると薬の供給がやや不安定なだけでなく、薬の用量が日本の基準に比べて多くなっています。日本で処方される薬は、日本人の体に合わせた基準になっていますが、シンガポールでは、東洋人と欧州人の体格差が考慮されていません。シンガポールで薬を飲む場合は、用量に注意しましょう。
タイの医療サービスとは?
東南アジアの中でも、タイの医療サービスは公的医療保険の対象です。公的医療制度や医療サービスはどのようになっているのでしょうか。
タイには3つの公的医療制度がある
タイには公務員医療保険制度、被用者社会保障制度、国民医療保障制度があり、全国民はいずれかの制度が受けられるようになっています。公務員医療保険制度は政府勤務の公務員とその家族が対象、被用者社会保障制度は、民間企業で働く人が対象、国民医療保障制度は社会保険に該当していない国民や自営業者、農家が対象です。
保険に加入していないと治療が受けられない場合も
タイでは、日本で加入できるような健康保険制度ではないため、病院によって医療費が異なります。そのため保険に加入しないという選択肢もありますが、緊急時に対応してくれる病院がない場合もあります。実際に、治療費を支払う能力がないと判断されてしまうとその場で治療を行わないというケースも現実的にあります。
マレーシアの医療サービスとは?
東南アジアの中でも、医療レベルが高いとされているマレーシアの医療サービスはどうなっているのでしょうか。
マレーシアの医療サービスは観光業にもなっている
医療レベルの高さは世界最高水準とされているマレーシアでは、医療が手頃な価格で提供されていることから、医療も観光業と認識されています。これまで、毎年約80万人近くの外国人が医療とバケーションを兼ねて訪れています。
医療保険の加入は不可欠
マレーシアの医療は観光業とされていても、治療を受ければ当然費用がかかります。国公立病院、クリニック、私立総合病院の順番に高くなりますが、これらは医療保険への加入により、日本と変わらない費用で受診できます。そのため、医療保険への加入は欠かせないでしょう。
カンボジアの医療サービスとは?
世界遺産のあるカンボジアは、観光客数も増加し急激な発展を遂げていますが地域によって環境整備の差が大きくなっています。医療サービスはどうなっているのでしょうか。
医療体制の構築が課題となっている
都市部を中心にマンションや医療機関が建築されるなど急激に発展しているカンボジアですが、このような激しい経済成長に医療が追い付いていないのが現状です。特に都市部は外国資本の病院もあるため、一定の医療が受けられるのですが、多くのカンボジア人は医師不足により、医者に行きたくてもいけない生活をしています。また、診察前に支払い能力を問われ、答えによっては適切な処置が取られないことも珍しくありません。
都市部には日本語対応の病院もある
カンボジアの都市部では、日本語に対応した病院があります。ここでは、日本人通訳スタッフの常駐や保険の加入によるキャッシュレスサービスも受けられます。
ベトナムの医療サービスとは?
以前と比べるとベトナムの医療サービスも高くなってきたとされていますが、現在はどうなっているのでしょうか。
医療保険の加入は必須
ベトナムでは日本と同じような医療サービスは受けにくいものの、医療保険の加入は欠かせないでしょう。ベトナムでは政府運営の健康保険制度があり、基本的には国民の多くが加入対象です。ベトナムで働く外国人も入るものですが、さらに日本人向けの民間医療保険サービスへの加入で便利になります。
自分の状況を伝えられる手段を用意しておこう
ベトナムで万が一の事態になることを想定し、事前に自分の状況を伝えられる手段を用意しておくのがよいでしょう。持病がある場合、誰もが状況を把握できるようベトナム語と英語で書かれたメモなどを持っていると安心です。
まとめ
東南アジア6ヵ国の医療サービスは、それぞれの国や地域によって内容も異なります。渡航前に国の医療サービスの特徴を知っておき、備えられる保険の加入がベストでしょう。